定刻に仕事を終えた男はCDショップに向かっていた。
男は「以前は新曲は一秒でも早く手に入れたいという一心で、昼休みの時間を惜しまず正午になったら真っ先にCDショップに向かっていたってのに・・・冷めたものだな・・・」などと思いながら、普段の帰り道とは逆方向に車を走らせていた。
そう思いつつも、仕事後の疲れを忘れて何の迷いもなく発売日1日前の購入、いわゆるフラゲをする為に車を走らせている自分にが妙にしっくりきてるコトに安堵感を覚えていた。
CDショップに着き新譜コーナーに向かうとすぐそれと分かる、男にとってはデザイン性もアイデア性も乏しいながらもその大胆さが気に入っている黄色いジャケットのCDが目に入った。
すぐさま手に取り、ジャケットを支配している田中れいなと目を合わせ「野心的・・・ホントあなたのイメージにピッタリだよ」などと心の中で呟きながらその場でじっとそのCDを眺めていた。
数秒後、男がそのCDのジャケットから目を離し辺りを見回すと男の近くには数名の客がいた。
それに気付いた男はモーニング娘。のCDのジャケットをじっと眺めていた自分が妙に恥ずかしくなり、CDを持つ手を他の客から見にくい所にスッと隠し、他の新譜を選んでいるフリをしていた。
するとオシャレサングラスをかけた長身の男性が、男が手に取った時と同じような勢いでこの黄色いジャケットのCDに手を伸ばし、手に取ったCDを満足気に見つめると、はやる気持ちを抑えきれないような感じでレジへ向かって行った。
その男性の潔い行動に、男は忘れていた熱い気持ちを思い出していた。
「そうだよ、彼女達のCDを買うのはうれしいコトなんだ!まして恥ずかしいなんてコトあるものか!」
会計を済ませ男が駐車場に向かい車のドアを開けようとすると、何処からか音楽が聴こえてきた。
HEY HEY happyな毎日 野心的でいいんじゃないか♪
男はそのかすかに聴こえる音に煽られるように車に乗り込み、急いで買ったばかりのCDをカーオーディオにセットすると、いつもよりもチョコット大きな音でモーニング娘。の新曲「Anbitious! 野心的でいいじゃん」を聴きながら家路へと車を走らせた。


見上げれば 未来 Boys&Girls! Be Anbitious!♪


車中に流れる曲を聴きながら、男は見上げた先にある明るい未来を思い描き大好きな彼女のコトを想っていた。